【絶対に面白い!】おすすめ小説まとめ~お気に入りを見つけよう~

実際に読んでみて面白いと感じた本を紹介しています。ミステリーから恋愛物まで多ジャンルをのせたいと思います。

『早稲女、女、男』 柚木麻子 【あらすじ・感想】

あらすじ

 早稲田大学四年の早乙女香夏子はアルバイト先の大手出版社に就職が決まる。香夏子の就職祝いの飲み会には、だらしなく、留年を繰り返す脚本家志望の長津田という腐れ縁の彼氏も来ていた。香夏子と長津田はくっついたり離れたりを繰り返しており、香夏子の就職祝いの場で久しぶりに会う二人だったが、長津田は相変わらずそっけなく、態度が悪い。さらには香夏子が必死に就活に励んでいる間に急接近していたらしい女子大の後輩と仲良さげにしている。

 こともなげに振る舞いつつも、内心動揺する香夏子だったが、内定先の紳士的な先輩社員に告白される。

 頭が固く不器用で面倒な早稲女香夏子と、彼女の妹・友人ら五人の女子大生の青春小説。

 

感想

 正直、現役早稲女である私からすると、「早稲女は香夏子のような人ばかりではないぞ!」と声を大にして言いたくなってしまいました。

 すっぴんに適当なまとめ髪、着古したジーンズ。女子らしさを見せようとはせず、何かとつけて「どうせ早稲女ですから」と自虐する。恋愛にはひたすら頑固で不器用。旅行へ行くとなれば、その土地の歴史、文明に対する理解、関心を持つべきであると考えている。以上がざっくりとした香夏子の特徴です。

 早稲田に入って3年半、私は香夏子のような人物に会ったことはありません…。しかしながら、これが世間の早稲女に対するイメージなのかもしれません。

 思わず出版年を見るが2012年、比較的最近のもの。続いて作者プロフィールを見たところ、作者の柚木さんは立教大学出身でした。「作者さん、早稲女のことちゃんと知らないんじゃないの?うむ、少々納得がいかぬ」と考えたところで、その面倒な私のいちゃもんは早稲女っぽいかも、いかん、と思いました(笑)。

 ただ早稲女にもギャル風、帰国子女、地味目(私を含め)、キラキラ女子と様々な人種がいるということだけはお伝えしておきます。

 ここまで読むとこの本をおすすめしていないようですが、序盤を読んでブーブーといいつつも(もちろん声には出していません)、最後までページをめくる手がとまりませんでした。

 本書は香夏子だけではなく、登場人物である妹、友人、先輩、後輩ら5人の女子それぞれを主人公にした短編で成り立っています。そしてそれらすべてがつながっていて、最後に香夏子の話が再び出てくるという構成です。

 登場人物は早稲田、立教、日本女子大、慶応、学習院と異なる大学の出身なのですが、香夏子の友人三千子の回では「すべての大学生が皆、多かれ少なかれ、イタくて重いのかもしれない」と出てきます。私はこのセリフ(三千子の心の声)が最も印象に残っており、胸にストンと落ちたような気がします。その通りなのではないでしょうか。

 人の弱さ、強がり、劣等感、ずるさ、悩み、様々な葛藤がつまった本書は、どの人物の回でもどこかしらは共感しましたし、自分にもこんなところがあるかもしれない、周りの友人もこんなことを考えているかもしれない、と気づかされもしました。

 まとまりのない文章ですが、『早稲女、女、男』はキラキラの大学生活を夢見る女子高生、まさに現役の女子大生、働く女子、若かりし頃を思い出す主婦の方、とにかく女性の方々に読んでいただきたいと思います。もちろん男性の方はまた違った面白さがあると思いますし、共感する方もいるかもしれません。ご興味があれば、ぜひ手に取ってください。