『少女は卒業しない』 朝井リョウ 【あらすじ・感想】
あらすじ
他校との合併のため、翌日には校舎が取り壊されてしまう高校の卒業式の一日が、7人の少女の視点から描かれている、ほろ苦い青春小説短編集。
図書室の優しい先生への想いをつづる「エンドロールがはじまる」、退学してしまった幼馴染の話「屋上は青」、生徒会の先輩、先生の話を答辞形式で語る「在校生代表」、「寺田の足の甲はキャベツ」、「四拍子をもう一度」、「ふたりの背景」、「夜明けの中心」が収録されている。
感想
まず驚いたのが、作者が男性であることです。本作品では少女たちの揺れ動く細かな心情が表現されています。切なさがあるけれど、読後感が爽やかです。
私が特に好きな作品は「屋上は青」です。主人公孝子が芸能活動の結果、退学してしまった幼馴染尚樹から屋上に呼び出され、卒業式をさぼる場面が描かれています。
孝子の方は、尚樹の夢に向かって突き進み、一見周りを気にしないかのような自由さに憧れ、羨み、自分だけ取り残されてしまうような寂しさ、焦りを感じています。その一方で、尚樹の方も、型にはまった真面目にならざるをえない孝子をすごいという。
最後に、いつも飄々とした尚樹が実は不安を抱えていることがわかる場面があります。心の中で尚樹を必死に応援する孝子の様子に温かい気持ちになりました。
いつもお互いのことが心のどこかにいるのであろうこの二人の関係がとても素敵だと感じました。